子どもたちにとって「家族ごっこは」人気のある遊びの一つです。年齢や経験など成長に応じて、「ごっこ遊び」は発展します。ままごとコーナーや砂場など限られた場所でなんとなく子どもたちそれぞれが「ケーキ屋さん」「〇〇レンジャー」など限られた「ごっこ遊び」からぐーんと広がって、園のあちこちで、一日を通してずっとごっこ遊びを広げ、深め、展開していけるようになるものです。
さっきまで「家族ごっこ」で「三姉妹の長女」だった女の子が飼育係活動の時間になると「ちょっとタイム!!私しばらく普通のA子に戻るから、ちょっと抜けるねー。」なんていうことはしょっちゅうです。
家族ごっこなどのなかで繰り広げられる子どもたちのことばや行動から、社会や家族の在り方、人とのかかわり方など人として大切なことを考えさせられることもしばしばです。
そして子どもたちの様子から幸せな家族の様子、多岐にわたる家族の一員としての役割が垣間見られます。
◆子どもたちの会話から・・・
☆「あなたー。朝ご飯はトーストでいいかしらー。」 (ママ役がパパに話しかける。パパ役はネクタイを締めているふり。)
☆「ごめーん。先に仕事にいくね。保育園よろしく―。お着替え持って行ってね。」 (先に仕事に出かけるママ役がパパに。もちろんパパはOKサインで「いってらっしゃーい」)
☆「今日はパパが飲み会でいないから、おばあちゃんちに遊びに行こうか!!また、みんなでサーティーワン行く?」(ママ役が子ども役に内緒話をするように楽しそうに)
☆「給料日前だから、節約よ。」(ママ役がスーパーに行って思案顔で)
☆「二日酔いだー。朝はコーヒーだけで・・・」 (パパ役がよろよろと)
☆「今日はママがお出かけだから、内緒でマックでお昼にしよう!!」(パパ役が子ども役にニヤニヤしながら)
☆「よしよし、パパがおむつを替えまちゅよー。」 (パパ役が赤ちゃんのお人形お世話をしながら)
☆「今日はパパ特製の野菜なしやきそばだぞ!」 (パパ役が子ども役を呼んでキッチンに立って)
こんな個性的で楽しいパパ、ママがいる家庭が園のあっちこっちにあって、もちろん家族ぐるみの付き合いがあったり、近所づきあいがあったり、街のお店屋さんがあったり・・・小さいけれど立派な社会です。
子ども役やの子どもたちも多彩で「ごっこ遊び」の中に幼稚園や小学校などもできてきて、必要な役は無限に広がります。夏休みやお正月近くになると遠い田舎の祖父母役やいとこなどレアな役も出てきます。
☆「宿題教えてあげるから持っておいで。」 (いとこ役が年下の子ども役に)
☆「子どもらでお祭り行くぞー」 (年長のいとこ役が子ども役をみんな引き連れて)
☆「あら、去年の夏より背が伸びたわね。」 (遠方に住む祖父母役が嬉しそうに)
☆「こら、お行儀よくしなさい!」 (祖父母にちょっぴりお説教・・・)
☆「これはじーちゃんからのお小遣いだよ。本でも買いなさいな。」 (祖父役が孫役に)
子どもたちは生まれてほんの数年ですが、毎日の生活、時折ある貴重な体験を通して、家族の在り方、家族の中での役割、ふさわしいふるまい方などを見て、聴いて、感じて、学んで行っているのですね。
社会の中では「お母さんが担うことが多い役割」「お父さんが担うことが多い役割」というのがある程度決まっているかもしれません。
そうしたある程度決まっている役割も時代や文化、地域によってそれらは微妙に違うでしょうし、月日を経る中で変化していくものでもあるでしょう。
さらにそれぞれのご両親それぞれの得意、不得意もあるでしょうから、どちらかひとりへの負担が極端に重くならないように柔軟に「家族の役割」を見出していくのが「家族の一員としての成長」「家族としての成熟」につながるのかもしれません。
「女らしく」「男らしく」「女だから」「男だから」「母親だけの仕事」「父親だけの役割」という画一的な線引きから、一歩進んで「得手不得手を尊重した分担」「生活スタイルに応じた家族の中での心地よい分担」というように、その都度築いていけるのが必要なのかもしれませんね。
家族で集う機会が多い夏休みのこの時期をきっかけに、子どもたちに伝えていきたい「父性」、「母性」「家族の在り方」について考えていきたいと思っています。