~育ちの順番~
子どもの育ちには規則性、法則性があると言われています。たとえば、赤ちゃんの体の育ちで言うと「首が座る」→「お座りをする」→「ハイハイをする」→「つかまり立ちをする」→「伝い歩きをする」→「歩く」というようなおおまかな順番で発達していきます。
ある程度の法則性はあっても、全くおんなじというわけではありません。お子さんそれぞれの育ちがあります。後ろに進むハイハイの時期が長いお子さん、右方向への伝い歩きが得意なお子さん、つかまり立ちをしたと思ったら、そのまま足が出て歩き始めたお子さん、慎重に慎重に歩き始めるお子さん、誰も見ていないところで立ったり座ったりを繰り返して楽しんでいるお子さん・・・本当にそれぞれのペースで経験し、身につけていくのです。
生まれてから「初めてづくし」の毎日の中で、「あたたかく見守り」、「できたことを心の底から喜び」、「何よりも誰よりも愛してくれる」親御さんの存在があるからこそ、赤ちゃんは安心して育ちの階段を上っていけるのです。
「じょうずだね」「がんばってえらいね」「よくできたね。もう1回やってみて」「ママ、うれしいな」・・・などお子さんがやったこと、できたこと、がんばったことを親御さんがその場で認め、誉めてくれることがお子さんのやる気、根気、挑戦する気持ちを育てていくのです。
食事、お風呂、排せつ、着替えなどの生活習慣も遊びもすべて同じです。
「ピーマン、お口に入れてえらいね。」「お目めつむってシャンプーがんばったね」「おしっこ出たの教えてくれてありがとう」「ズボン、一人ではけたの嬉しいね」「積み木、たかいたかーいって積めたね。すごいね。」などその場で、タイムリーに、温かく認めてくれる言葉を浴びているお子さんは、自然と自信をつけ、初めてのこと、新しいことに取り組むことを楽しめるようになっていくのです。
ついつい「しっかり」「上手に」「早く」「覚えるまで」という気持ちが先に立ってしまいがちで、親御さんもお子さんも純粋に楽しむのが少し難しくなってしまいがちなことの一つが「文字の読み書き」です。
お子さんの成長に伴って、経験が必要になってくる「文字の出合と習得」は、小学校から先のお勉強につながっていくイメージが強くなるからかもしれません。「上手か下手か」「できたかできないか」「覚えたか覚えていないか」「早いか遅いか」・・・といったこれまでの「それぞれのお子さんの育ちを喜ぶ」という関わりが、知らず知らずのうちに「もうできた」「まだできない」「成績の良し悪し」といった画一的な評価が強まったり、比較することに傾きがちになったりするからかもしれません。
特に「文字の読み書き」は大人からすると難なくできることなので、子どもの「できなさ」「わからなさ」を歯がゆく感じやすく、「なんでできないのか」「まだ覚えてないこと」や「できていなこと」に目が行きがちですが、誰もが時間をかけて身につけていくものです。間違えながら正しく覚えていくものです。大人に見守ってもらいながら少しずつ一人でできるようになっていくものです。
まずはお子さんの「興味を持って学ぼうとしている姿」を認め、誉め、「文字の読み書き」に出合ったばかりの面白さや不思議さを共有しましょう。「小さいころ、自分もこうだったな。」「こんなふうにして覚えたんだった!」など懐かしく思い返すことが、お子さんに寄り添うことにもつながります。
もしも繰り返し「できない、わからない」という状態に出合ったら、少し立ち止まって振り返ってみましょう。「お子さんは楽しそうか」「いやがっていないか」「本当に興味を持っていることは何か」とお子さんの姿や表情を思いやることは、なんでもないことのようですが、健やかな成長・発達を支える基本であり、大切なことです。
親子で文字に触れているときにお子さんに笑顔が少なかったり、少しいやそうな表情になったりしているとしたら、少し時期が早いのかもしれません。お子さんの興味に沿っていないのかもしれません。素材に飽きているのかもしれません。なかなか覚えられなくて親御さんの期待に沿えない自分を悲しく思っているのかもしれません。
文字を早く覚えさせようとして肩に力が入っていたり、楽しめていないご自身の様子に思い当ったりしたら、一生懸命さが空回りしてしまっているかもしれません。
こうしたことに気づくことができたのであれば、大丈夫です。「文字の読み書き」を少しお休みする時期を作ってみるのも有効です。またちゃんと興味を持って「読んだり書いたり」を楽しむようになるはずです。これは「後戻り」はありません。少し「休憩」するだけですから、時期が来ればまたしっかりと親子で楽しく学べるようになります。
遊びの力や生活習慣など年齢や段階に応じて親御さんのお世話を受けながら、一つ一つ身につけていったのと同じように、「文字の読み書き」も「ふさわしい時期」に「大人の温かい見守りと手助け」を受け、「大人と一緒に楽しく経験する」ことが欠かせないということを今一度心に留めておくと良いでしょう。